第16章 契約違反

スカイラウンジ・レストランは、しんと静まり返っていた。

広すぎる個室にいるのは、南坂海乃ただ一人。

テーブルには、前菜からデザートまで揃った手の込んだフレンチ。けれど、どれもすっかり冷め切っている。

四度目に入ってきたスタッフが、恐る恐る声をかけた。

「奥様、お料理を温め直しましょうか」

「いいえ」

海乃は赤ワインのグラスをくゆらせ、窓の外――きらめく街の灯りへ視線を投げた。

時間だけが、淡々と過ぎていく。

八時、九時、十時……。

スマホはテーブルの上で静かに横たわったまま、通知一つ鳴らない。

やがて短針が指したのは、十一時五十五分。

二十五歳の誕生日が終わるまで、あと...

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